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バースデーディナー-2

「え……と、先生、質問……」  設楽が恐る恐る右手を挙げると、大竹は鷹揚に頷いた。 「はい、設楽くん」 「はい、先生。えっと、何でそんな外国人ばっかり住んでたの?なんか、そういう外国の人が多い地域とかがあるの?」 「いや、地域性では全くないな。日本人のオーナーって、外国人に部屋貸すのイヤがるんだよ。ほら、パーティーして騒いだり、同国人を勝手に住まわせたり、家賃滞納したら本国にバックレるんじゃないかって、勝手な先入観でさ。だから逆に外国人にも貸してくれるマンションやビルがあると、すぐコミュニティに噂広がるから、そういうビルって外国人の居住者が増えてくんだよ。面白いビルだぞ。俺がガキの頃だけでも延べ十ヶ国ぐらいの奴らが住んでたかな」 「へ…、へぇ……」  先生がどんな環境で育ったのか知りたいな、等と思っていた先程の自分へ。  実家に行かなくても、先生の育った環境がどんなだったか粗方分かっちゃいましたよ!しかもすごい濃い!!なんだこの濃さ!ホント人に歴史ありだな!? 「ま、話はともかく冷めないうちに食べてくれ」 「あ、うん。いただきます!えっと、主食はコルカ……?」 「コルカノン」 「そうそう、そのコルカノンが主食で良いのかな」  パンもライスも出ていないテーブルを見て、至って日本的な食事になれている設楽はついつい主食を探してしまう。 「あぁ、多分そうなんだろうな。あんまり今まで考えたこと無かったけど。てか、ジャガイモ多すぎだよな……。スタッフドポークもジャガイモ巻いてるし」 「そっか。当たり前に食べてると、そういうもんかもね、きっと」  そう言いながら、ポークにリンゴのソースを塗って食べてみる。肉にジャム!?と思ったが、食べてみると、ほとんど加糖していないリンゴのソースは爽やかな酸味があり、こってりした肉に良く合った。 「おいしい!初めて食べたけど、甘酸っぱくて美味しいね、先生!」 「そうか?良かった」  大竹はホッとした顔をして笑うと、自分も安心したようにフォークを手にした。 「これ、作るの大変だったんじゃない?」 「まぁ、昔はヘルガの手伝いもしてたから、手順は大体分かってるんだけど、それより初めて自分で作ったから、味付けが心配で……」  なんだか恥ずかしそうにソワソワと食事をする大竹に、そんなにミックスカルチャーの雰囲気は見られない。だが言われてみると、何事にもあまり偏見を持たないフラットさとか、他人の意に流されずに自己主張する様子は、日本人には珍しいのかもしれない。 「ニンジンのポタージュも、生姜が効いててすごい美味しい。これ、でも子供には好き嫌いが別れるところじゃない?」 「そうか?俺達、あんまり好き嫌い無かったからなぁ……」  そりゃ、それだけ色んな国の食事を摂っていれば、好き嫌いはなくなるのかもしれないが……。 「あれ?そう言えば、じゃあ先生ってその人達とは何語で喋ってたの?先生、ひょっとしてマルチリンガル?」 「いや、同国人同士の時なら母国語話すんだろうけど、みんなでいる時は普通に日本語か英語だぞ?」 「え?日本語?」  外国人同士が集まって日本語を喋っているという図が、あまり想像できない。英語ならどこの国の人でも話しそうなものだが……。

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