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「おい、大丈夫か!」
やはりというか、潤にも想像できる結末だった。浴室に横たわってると、颯真に異変を察知され浴室のドアを開けられて、驚かれた。
服が濡れるのも構わず、颯真はシャワーを止めて、全裸の潤を抱き寄せる。隠すものもなにもなく、さらにシャワーの湯と涙と鼻水でぐずぐずの顔を凝視されるのが恥ずかしくて、そのまま颯真のシャツを握り込み、胸に抱きついた。
「潤……」
颯真がとりあえず身体を冷やすなとバスタオルを身体にかけて、もう一枚のタオルで水滴が落ちる髪を拭いてくれた。潤もタオルで身体を拭いた。
言わなくても何があったのかを悟ったのだろう。颯真からは詳細を問われないまま、洗い立ての下着とパジャマを渡してくれて、さらにリビングではドライヤーを使って髪を乾かしてくれた。
何も聞かずにただ寄り添ってくれることで、潤の気持も少し落ち着いてきたのだった。
「この間効果があった薬を使おう。そうすれば、おそらく少しは眠れるから。その前に診察だけさせてくれる?」
髪を乾かしてドライヤーを片付けながら颯真が提案した。気分転換などではなく、もはや医療的な処置が必要だと颯真が判断したのだろう。そう言われて、潤も異論はなかった。とにかく楽になりたかったし、ゆっくり身体を休めたかったのだ。
ただ、発情期が継続しているか否かについてはおそらく香りでも判断がつくだろうに、どうして下半身の診察が必要なのだろうと、ふと思った。
颯真がリビングに置いてあるドクターバッグから注射剤のシリンジキットを取り出して、潤の部屋に誘う。
シャワーを浴びている間に、こちらも颯真が洗いたてのシーツに交換してくれていた。
潤がベッドに腰掛ける。
「パジャマのズボンと下着を取って、俯せになってくれる?」
颯真から意外な指示を出された。俯せ? と疑問に思ったのが、そのまま顔に出た。
しかし、颯真は何事もないようにそうだと頷いた。
「ちゃんと腰にタオルを掛けるから大丈夫だよ」
颯真が、部屋のクローゼットからバスタオルを取り出してきた。
そう言われては潤も従う他ない。もぞもぞと先程身に着けたパジャマのズボンと下着を取って俯せになると、颯真が腰にタオルを掛けてくれた。発散されない性器は、今なおゆるりと熱を持っていた。
この兄には、ここ数日で散々全裸を見られているはずなのだが、こういう体勢はやっぱり恥ずかしい。
颯真が潤に枕を渡す。
「枕を縦にして顔や胸の下に入れて支えにすると楽だよ。そう。それに捕まる感じで」
その指示に従って体位を調える。
「それで膝を曲げて、お尻を上げてくれる?」
枕に腕を絡ませて、膝を立ててタオルが掛かった腰を上げる。
「脚を少し開いてね。そうすると診やすいから」
腰を高く上げたことで、パジャマの上衣の裾が背中から胸にかけて落ちてまくれ上がる。
やはり慣れないせいか、緊張する……。
どうしていつもの受診体位ではないのか。違う診察なのかなと疑問にも思う。いつものも十分の恥ずかしいが、これは颯真が全く見えないため、不安な気分も伴う。枕に顎を乗せて、戸惑いに耐えるように目を閉じた。
「タオルをめくるよ」
その声に無言で頷いた。
今の自分の姿を思い浮かべると恥ずかしさしかないので、それを脳裏から追い出す。
颯真がタオルをそっと外したのがわかった。思わず下半身に力が入ってしまう。
「潤」
颯真の優しい声が背後からする。暖かい手が尻に触れられて、ビクンと背中が大きく反応してしまった。訳もなく心臓が跳ねる。
なにこれ。
潤は動揺した。
思わず顔を上げて振り返る。無防備な潤の下半身の前に座る颯真の姿が見える。
「いつもと違うから緊張する?」
本当はそのとおりなのだが、潤は首を横に振って強がった。
「だいじょぶ……」
「すぐに終わらせるね」
そして再び枕に抱き付いた。今度は枕に顔を埋めた。
「少し違和感があるからね」
「……うん」
颯真が肌を指で広げたのが分かった。もうきっと自分のその場所は彼には丸見えだ。
そして、指がぷつっと入ってきたのが分かった。
思わず目をギュッと閉じて、息を詰める。
「ちゃんと息して。大丈夫だから」
鋭い颯真の一言で、初めて息を詰めていたことに潤も気がつく。鋭すぎる……。
颯真にも分かるように、口を開いて大きく息を吸って吐いた。
その呼吸に合わせて、颯真の指が潤の中にぐっと入り込む。
「んっ……」
思わず声が上がった。それは先日感じたものと同じ。そこに収まるものがあったという、安堵と充足感。
気持ちが、とてつもなくいい。
先日も思った、自分は変だと。なんでこんなに颯真の指に快感を覚えるのか。
もちろんそれを颯真に知られるのは、恥ずかしい。
早く、早く終わってほしいと潤が願っていると、颯真の指がぐるりと潤の中を巡った。思わず息が詰まり、下半身に力が入ってしまった。否応なく背筋がしなり腰が動く。
「あ……ん」
思わず枕に口を当てたが、声が漏れた。
どうしよう、聞こえたかも……。
空気に晒されている下半身がゾクゾクしている。
確認はしたくないが、先程萎えてしまった性器が再び頭をもたげているのも分かる。
身体中が性感帯のように興奮している。 息遣いが上がっているのを自覚する。
なんで?
「うーん。まだ発情の症状は治まらないね…」
颯真はそう呟いて、潤の中を二本指で往き来する。その間も刺激で分泌されているオメガ特有の分泌液がくちゅくちゅと水音と立てる。ことさら恥ずかしい気分になった。
「あっ……ん」
たぶんあそこはグズグズになってる……。
この診察はこんなに長かっただろうかと思うほどに颯真は念入りに潤の中を診察した。
もともとゆるりと勃ち上がっていた潤の性器が大きくいきり立ってしまい、快感の逃し方が分からない。身体はとろけそうなのに、気持ばかりが焦る。
颯真は気がついていないよね?
そればかりが気になる。早く終わってほしい。
「大丈夫、力抜いて」
どうしよう恥ずかしいのに気持がいい……。
潤が僅かに目を開いて、熱い吐息を漏らす。
「潤、ごめんな」
颯真にいきなり背後から呼びかけられ、謝られた。
「こんな方法しかなくてな。ちょっとしんどいかも」
え、と異変を察知した潤が、振り返ろうとしたときに、颯真の指がこれまでとは明らかに違う手付きで潤の中をぐるりと撫で回し、一番感じる場所をぐっと押した。
「あっっ……!」
とっさのことで、思わず声が上がる。
背後から颯真の声が聞こえる。
「そうやって枕にしがみついてろよ」
「……そう……っ」
枕から顔を上げようとしたところで、颯真が、潤の後蕾に再びぐっと指を入れ込み、ぐりぐりと刺激を与え始めた。
「ああ……っ」
潤はいきなり与えられた衝撃と快感で、漏れる声を抑えることができなかった。
するとふわりと感じたのはアルファの香り……。颯真のものだ。いや気のせいだ。思わず身体が反応するなんて。颯真の香りは好きだけど、こんな風にアルファとして認識したことなんてなかった。
「怖くないから。ちゃんと出せば楽になる」
出せば……?
颯真が潤の耳元で言う。その声でさえ潤には刺激になる。潤は、颯真が自分を絶頂まで導こうとしていることを悟る。なんでそんなことを颯真が……と疑問に思ったのは一瞬。怖いと思うけど、もう主導権を颯真に取られていて、抵抗もできない。
くちゅくちゅと後蕾を刺激されながら、潤の耳元に声が届く。
「いいか。今ここを可愛がっているのは、お前を愛おしいと思っているアルファだ。酷いことはしない。怖いこともしない。落ち着け」
潤はとろけかけの頭でどういうこと? と考えるが、もう頭は禄に働かない。……颯真の声であるはずなのに、それさえも曖昧だ。
「そう、いい子だ。気持がいいことに身を委ねるだけでいい」
身体を支える大腿がふるふると震える。颯真が与える手淫によって、潤の身体から、だんだんと力が抜けていく。
颯真が手を回し、屹立する潤の性器を手にする。
思わず衝撃に腰が震え、声を上げた。
「っはあ……!」
自分ではない誰かがその場所に触れているという快感が、身体に電流となって全身を駆け巡る。
その指は、ぐりぐりと刺激を与えていた潤の中から抜け出て、オメガの分泌液を性器に塗りつける。絶えず与えられる快感に耐えられなくなり、脚ががくがくとして腰が落ちる。結果、開脚角度が広がったようで、さらにその手の自由度が高まってしまった。
完全に颯真の手に落ちかかっている自分がいるのを潤は自覚している。
なんで、どうして、なんて疑問はもう潤の脳内にはなかった。
ただただ、快感を追い求める。
この手は自分よりも何倍も快感を生み出してくれる。
「はぁ……っ……そう……ま」
「そう、えらいね。感じているときは声に出して」
感じてる声を聞かせて? と颯真が囁く。
もはや、乱れてたくし上げられたパジャマの裾から、手が侵入し、指の腹で乳首も愛撫された。
普段はそんな場所、触ったこともないのに、全身が粟立ちぞくぞくする。
「ふぅ……んっ」
なぜか、イッてしまうほどに気持がいい……。
だめ押しのように。颯真がくりっと亀頭に刺激を加えた。
「んっ…はぁ!」
腰が揺れた。
颯真の指が絡められた潤の性器から、白濁のものが吐き出されたのだった。
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