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 廉に怒られない程度にして、なんて言ったけど、颯真と素肌を触れ合わせるのは嬉しくて、いつもワクワクしてしまう。期待が膨らんで気持ちが爆発しそうだ。つい先日の週末にも身体を重ね、さらにやりすぎて薬まで塗られたというのに。  自分はこんなに貪欲であるというのを、潤は颯真と気持ちを繋いでから初めて知った。  浴室で始めると無駄に体力を消耗しそうだからと、颯真に促されて浴室から出る。そのまま発情期の時に活躍したバスローブを渡され纏う。  あの時に着たバスローブというところが、あの濃厚な発情期を思い出して、一人でドキドキする。きっと、ベッドに移動したらすぐに剥かれてしまうけど。 「このバスローブはわざわざ……」 「はは。思い出すだろ?」  なにを、とはあえて言わないが、言葉を弾ませて反応する。そしてそのまま、髪を丁寧に乾かしてくれて、寝室に送り出された。少し待ってて、と言われて。  颯真の部屋でベッドに腰をかけると、気持ちがパンパンに膨らんで、どうにもならなくなってくる。  ベッドに横たわると、かすかに香る颯真の匂い。思わずシーツに顔を突っ込む。くんくんと薫ってくる香りに安堵する。 「おまたせ」  しばらくして颯真が戻ってきた。  変わらずシーツに顔を埋めている潤を見て苦笑している。 「本当にそっちが好きなんだな」  さっきワイシャツに顔を埋めていたことも含めてそう言われているに違いない。  颯真が、そんな潤の項にキスをした。 「本物もこっちにあるぞ?」  潤が振り向く。 「両方がいい」  そう言って、颯真の胸に飛び込んだ。 「よくばりだな」 「ん……だって、僕のものだもの」  潤がそう言うと、颯真が頭を優しく撫でる。 「そうだな。俺はお前だけのアルファだからな。いくらでも。欲しいだけ」  俺はお前だけのアルファだと、颯真の言葉に潤は大層な満足感を得た。自分だって、颯真のためだけに生まれてきたオメガだ。  わかっている、理解しているのだが、時折颯真がそのように言ってくれると、潤の中の独占欲が満たされる。言葉にするのは大事なようだ。    颯真が、潤を横たわらせ、バスローブのベルトを解く。  暖かい唇が上からそこに触れた。そしてそれが重なるように、ちゅっちゅっと可愛らしい音を立てる。そのたびに項から背筋にかけて、快感でジンジンする。  ベルトは解かれ、前を広げられる。もうそこにはないも隠すものはない。だけど、颯真のキスが気持ち良すぎて、潤は脚を少しもぞもぞさせた。もうキスだけで身体が煽られている……。  音を立てる触れるだけの可愛らしいキスが、気がつけば深く深く交わるものになっていた。口を開き、舌を迎え入れ唾液を絡ませる……。身体が火照る。 「そうま……」  息を絶え絶えに名前を呼ぶ。  颯真が潤の脚を少し掲げて開き、指を奥に這わせてきた。くいっとその場所に入る感覚がして、腰が跳ねる。ピンポイントで攻められて、思わす順は快感の声を漏らした。 「あ……ん」  颯真の視線はそんなふうに感じる潤の顔を直視していて、少し恥ずかしい。思わず口を抑えたが、彼には知り尽くされた、内側の快感部位を刺激されて、再度腰が跳ねて、悩ましい声が漏れた。  全身を愛撫されながら、その場所に指を入れられぐりぐりと広げ刺激をされ、潤が二度達すると、薄膜を着けた颯真がぐいっと潤の中に押し入ってきた。 「はぁ……ぁん」  あるべき場所に埋まる満足感で声が漏れる。  そう、颯真はここにいるべきなんだと、潤はアルファの猛りを受け入れるたびにそう思う。  腰を使って奥まで攻めたてられ、潤は身体をびくつかせて、快感を逃す。 「お前は感じやすいな……」  颯真が弾んだ声を上げる。  颯真にとって、自分は抱きやすい身体なのだろうか。潤の脳裏に疑問が沸いた。 「颯真……は?」  潤がそう問い返すと、潤の中に全てを埋めた颯真が、気持ちいいよ……を吐息を漏らすように呟いた。柔らかくて優しい視線を湛え、満足げに吐息を漏らすように呟く姿は、自分と身体を重ねている時に見る。  彼に抱かれるようになって、見上げるようなこのアングルからよく見るようになった。  その表情が潤は好きで、愛おしさが胸に込み上げる。脚を広げて、しんどい体勢で繋がっているにもかかわらず、颯真の唇が恋しくて恋しくてたまらない。 「そ……うま」  潤が両脚で颯真の身体を挟み、ぐっと力を入れると、颯真が身をぐっと倒して、潤の唇を重ねる。交歓を楽しむように、唇を重ねると、「なんでわかったの」と潤は聞いた。  颯真が楽しそうに答える。 「欲しそうな顔してた。  下の口だけじゃ足らなくて、上もっておねだりされて、俺は幸せだ」  そう言って頬を撫でて、限界が近いのか、その場所に収まる颯真自身がぐっと質量を増し、潤のデリケートな場所がさらに推し広がった気がした。  潤は颯真を見る。 「颯真が気持ちいいようにして、いいよ……」 「潤?」 「颯真も僕の身体で気持ち良くなって。いつも僕の快感を優先させてくれるでしょ。ありがとう、でも大丈夫だよ」  そう言うと、颯真が少し困ったように笑った。 「お前は……。本当に俺をうまく煽ってくれるな」  そして、がつんと潤の中に大きな快感が爆発した。背筋が跳ねる感覚。思わず悲鳴のような声が漏れた。 「ああっ……!」  そこからアルファの快感の波に揉まれた。この間の発情期のなかで颯真のヒートが暴走して、抱かれ続けた一昼夜を彷彿とさせる、濃密な快感にさらされた。  颯真と颯真自身に愛撫されて愛されて、意識が途切れるかもと思うほどに喘いで、颯真が達し、潤も颯真の手の中で果てた。   「愛してる。何度も言う。俺はお前だけのアルファだ」 「僕だって……。誰がなんと言おうと、僕は颯真だけのものだから」  少ししんどい体勢で颯真を正面から受け入れたせいか潤はしばらく動けなくて、颯真がすべてを片付けてくれた。デリケートな部分のケアを含め身体を拭いてくれて、下着と寝巻きを渡してくれる。体液を拭ったバスローブは早々に洗濯機行きとなった。    落ち着くと、颯真は潤を抱き寄せた。 「身体は平気か?」  腰を摩り、気遣ってくれるのが嬉しい。 「うん……。ちょっと股関節が変な感じだけど大丈夫だよ」  颯真は潤の股関節を寝巻きの上からさすってくれる。颯真に触れられるのは気持ちがいいけど、そこは少し刺激的。性懲りも無く再び反応しちゃわないかなと少し心配しながら、労りに身を委ねていると、颯真が真面目な顔で呟いた。 「少し無理をさせたな。いつもさせてるけど」  そう言うので、潤はあえて口を尖らせる。 「廉に怒られない程度にしてって言ったのにね。明日歩けるかな」  半分冗談でそう言ったのに、背後からぐっと抱きしめられた。そして耳元で囁かれる。 「平日なのに、付き合ってくれてありがとうな」  そんなことを言うなんて。少し違和感を覚えた潤は、颯真、と声をかけた。 「なんでそんなことを言うの? 僕はいつも颯真と一緒になりたいって思ってるよ」  少し刺激的な言葉だけど、きちんと言わなければならない気がした。  颯真も頷く。 「うん、知ってる。でも、今日は嬉しかったんだ。  ……潤に、こうして受け入れてもらえると、俺は勇気が出る」  その言葉に、潤は背後を振り返るように、颯真に視線を向ける。潤の首元にキスを落とす颯真は、穏やかな表情を浮かべていた。 「ここまで来れたんだからな。……あと少しだ」  零れ落ちるような小さな一言に、潤も察した。 「そうだね。あと少し」  そう頷くと、颯真が項にキスをした。  潤は納得した。今夜の営みは彼にとって必要だったのだ。大丈夫そうな顔をしていても、颯真だって不安はあるだろう。  先代とのこととはいえ、かつては自分の進路が阻まれそうになったこともある皐月会。番の手前、大丈夫だと余裕を見せても、やはり拭いきれない不安はあるに違いない。  それを、颯真はわずかに見せてくれた。  潤はそれが嬉しかった。  すべてにおいて完璧なアルファだって、そういう時もある。  颯真はそれを、少し潤に見せてくれるようになったということだ。    兄弟としてパートナーとして、そして番として、自分は片割れから頼りにされていると実感する。それはとても嬉しいこと。  このような気持ちの揺れは、強いからといってアルファだけが背負うものではない。二人で乗り越えていけばいいのだから。

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