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 すぐにビールとオレンジジュースがサーブされ、続いてつまみも。生ハムとタコのサラダだ。白い皿に無造作に山盛りにされていて、それがまた空腹には魅力的に見える。  四人で乾杯とグラスをかち合わせる。  本当に暑くて、喉もカラカラだったから、ごくごくとオレンジジュースを飲んだ。美味しい。  やはりスーツでは暑くて、潤はジャケットを脱いでベスト姿になった。颯真も同じタイミングでジャケットを脱いでワイシャツ姿になったので、それも受け取って一緒に椅子の背もたれに掛けた。ワイシャツとベスト姿になると気持ちに開放感が出て、思わず袖もまくる。 「そういえば潤さんって、いつもベストを着てますよね」  尚紀が気づいたように言う。確かに目の前の颯真は同じスーツ姿だけどワイシャツ一枚、江上もそうだ。  潤は楽しそうに尚紀に言う。 「そうだね。わりと好きなんだ」 「偉そうに見えるよな!」  そう茶々を入れたのは江上。潤は苦笑した。 「フォーマル感が増すから着た方がいいって言ったの誰だよ」 「俺だな」  あっさり頷く江上に、尚紀が目を丸くする。 「廉さんなんですか?」  向かいに座る尚紀に優しい眼差しを向ける。 「そう。外見と立場がそぐわなくなってきたから、少し外見を引き上げろ、って」  ドイツから帰国して取締役に就任した時だったと思う。ビジネスシーンでも普通ならばスリーピースは偉そうに見えることもあるからTPOを選ぶとされるが、江上からは逆のことを言われた。  偉そうに見せろ、と。  懐かしいなと潤は思う。  すると尚紀が、隣に座る潤をまじまじと眺めてから、江上に視線を移した。 「そうなんだ。かっこいい潤さんをプロデュースしたのは廉さん……」    尚紀に面と向かってかっこいいなどと言われると照れるので、えへへ、と潤は笑顔で誤魔化す。 「廉の狙い通り、偉そうには見えるね。僕のように若くて社長になると、肩書きと雰囲気が少しちぐはぐになってしまうんだよね」  その潤の言葉に尚紀は本気で驚いた様子。 「え、そんなことないですよ。潤さんは立派に社長さんに見えます」  尚紀のそんな言葉に潤もふふっと嬉しくなる。 「尚紀は素直にそのままを見てくれるものね。でも、世の中は僕みたいな若輩が社長をやってると、ついつい見下したくなるような人もいるんだよ」  あとね、と潤は続ける。 「ワイシャツ一枚って、少し僕には心許ないんだよねー」  インナーの上にワイシャツを着てはいるものの、どうしてもウエスト周りが心もとなくて、気軽にジャケットのボタンをはずしたり、脱いだりということに少し躊躇いを覚える。  その点、ベストを着ていると、ワイシャツの上に一枚あるという安堵感で気にならない。 「廉に言われてスリーピースにしてから、もっと気軽に着こなしができるようになったんだ」 「ふーん。それは初めて聞くな」  颯真が頬杖を突く。 「あまり話すような内容でもないしね」 「そういうことを気にしてたんだ」 「うん。真夏以外はわりとジャケットを羽織ってることの方が多かったよ。でも抵抗感があったんだなって気が付いたのは、スリーピースにしてからだね」 「本来、ワイシャツは肌着のようなものだから、心許ないのかもな。俺はお前がベスト着てるの好きだな」 「そうなの?」  そこに好みが存在していたのかと、潤は少し意外に思う。  颯真が頷く。 「なんていうか、ガードが堅い感じがしていい」  ガードが堅そうな方が良いのかと潤は思った。尚紀も頷く。 「分かります。偉そうっていうより、ストイックな感じがしますよね」  そんな話をしていたら、ピザが続々と運ばれてきた。 「お待たせしました!」  窯から取り出したばかりの、熱々の焼きたてピザが並ぶ。 「美味しそうです~!」 「すごい!」  尚紀と潤の歓声が飛ぶ。  目の前のアルファ二人がにんまり笑った気がした。 「熱いうちに早く食べよう」  そういってピザの大皿に手が伸びる。  ピザ生地を引っ張ると白いモッツァレラチーズが伸びて、何とも言えない美味しそうな香りが漂う。 「いただきます!」  尚紀と一緒にマルゲリータを口にすると、熱いチーズとフルーティーなトマトの味わいが何とも言えない。後から抜けていくバジルの香りも堪らない。 「美味しいね!」  一口でそう目を輝かせる。隣の尚紀も美味しそうにほおばっている。  颯真と江上は楽しそうにそれを眺めていた。

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