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 颯真から与えられた触れるだけの優しいキスは数回だけで、すぐに求めるような情熱的なキスに変わった。  潤が颯真の口腔内に舌を入れると、彼は優しく迎えてくれて、愛してくれる。唾液を交わし、舌を絡めて、唇を味わう。  やっぱりそれだけでは足らなくて、彼をぎゅっと抱きしめたら、颯真が助手席のリクライニングを倒し、フラットシートにしてくれた。愛おしく大切にしたい気持ちと、体温を求める欲望が伝わったみたいだ。  車内、ということは十分わかっていたが、気持ちが止められない。自制の気持ちに反して、誘うように腰が動く。  触ってほしいし、気持ちよくしてほしい。颯真のフェロモンに身を委ねて、安心したい。  そんな欲望で、潤の頭はいっぱいになった。 「あっ……」  狭いなかでも、颯真が器用に潤の身体を煽る。スーツの上からデリケートな場所に触れられ、存在を示しつつある形を確かめられる。 「ふふ。興奮してる?」  そんなふうに言い当てられて、潤は口を噤んだ。そんなふうに言われては……自分はどこでも見境なく盛るような人間ではないと思うけど。 「だって……こんな場所だもん」    車中だ。窓の向こうは人気はないけど……真っ暗な公園だ。助手席の背もたれを倒されて、颯真にのしかかられているのは、側から見れば異様だろう。  おそらく、夜闇に紛れて誰も見ていないだろうけど。  車中だから、余計に颯真が近い。息遣いを感じるくらい。だから、彼もまた興奮しているのを潤も感じた。 「こういう場所もたまにはいいだろ。少し気持ち良くなろうな」  そう言うからには、気持ち良くしてくれるのだろうと内心で期待に震える。  颯真は再び舌を差し入れてくる。唇を優しく愛されて、唾液まみれになり、さわさわと右手で耳たぶを触ってくる。髪を梳いてくれて……。それが気持ちいい。うっとりとしていると、続いて颯真の手は下に伸びて潤のデリケートな場所に触れた。  思わずキュンと腰が揺れて、目を見開くと欲望に濡れた颯真の視線とかちあった。 「かわいい」  弾んだ呟きの後、器用に片手でベルトを外され、ボタンも外される。するすると顕わにされてしまいそう……。しかし、車内が狭いためか、そのまま下着の中に手を入れられて、直接触れられた。  敏感になっている場所をアルファの手に触られて、潤の腰が驚いて揺れる。 「あんっ……」  思わず吐息を漏らすと、びっくりさせたなと謝られた。 「ううん……。颯真に触られるの、好き」  そういうと、今度は額にキスをされた。そしてそれは目元、こめかみ、耳と移動してきて、首筋へ。  そして颯真の温かい手は、少し興奮する潤のフロントを、ゆっくり優しく握り込んだ。  それだけで、気持ちが良くてどこかに飛んでしまいそう……。  颯真の下で気持ちよく弄られて、熱を持った吐息を漏らしていると、その先端をふにふにとこねられた。 「ふっ……ん」  変化のある快感に思わず声が上がる。熱がその場所に集中する。  さらに、あん、と小さく快感の声を上げてしまった。 「潤、キスして……」  颯真にそう強請られて、潤は颯真の首裏に腕を回し、唇を交わした。 「んっ……」  再びどっぷりとした深い唇の交わりを楽しむと、颯真の右手が潤自身を追い立て始めた。 「あっ……そう……! あっ……あ」  気持ちが良すぎる。颯真の指は、潤の快感を的確に捉えていて、意識せずとも腰が動いてしまう。これが自分が求めているアルファが与えてくれる安堵と快感なのだと思うと、とてつもない安心感が潤のなかで生まれて、じわりと染み込むように胸に広がっていく。  これが自分の居場所だ。  腰が颯真を求めて揺れ動く。颯真がかわいいなと嬉しそうに呟くのを、潤は颯真の胸の中で聞く。 「本当は……お前が俺の腕のなかでひたすら乱れてくれていたら……幸せなんだけどな」 「そう……?」 「本当は戦わせたくなんてないよ。傷ついてほしくない。お前はいつでもどこまでも、幸せで無邪気に笑っていてほしい」  でも、これは俺の単純なわがままだからなあ、と颯真は苦笑する。 「潤」  攻め立てる颯真の手技に身を委ねていた潤の耳元で囁きが聞こえる。 「だから、せめて今だけは……俺を感じて」  そうして颯真は先走りに濡れた滑りのある指で潤の先端を刺激した。 「ああ……あん!」  もう声は抑えられなかった。甘い喘ぎが口から漏れる。  腰から貫くような快感が走り、潤の腰が跳ねる。下着の中が白濁に濡れた感触。  気がつけば視界が潤んでいた。ゆらめく視界の先に、颯真が苦笑半分の嬉しそうな表情を浮かべている。 「たくさん出したな」  もう……颯真のせいだよと言いたいが、息が上がって難しい。颯真を見ると普段はほとんど見ないような、優しい眼差しを浮かべている。彼の優しさをじんわりと感じて、快感と共に双眸からほろりと涙が流れた。  颯真がそれをするっと吸い取る。 「大好き……」  潤の言葉に、颯真が頭を優しく撫でて苦笑する。 「俺もだ。すぐに潤の中に入りたい」  潤自身も本音は今颯真と交わりたい。 「くる?」  思わずそう聞いてしまったが、颯真は困ったように煽るなよ、と言った。 「ここでは我慢しておく。早く帰ろ。帰ってすぐにお前を抱きたい」  こんなに可愛くて色っぽい反応を見せられて……まずい、玄関に入ったとたんに襲いそうだと、颯真が困ったように笑った。

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