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「今日は早く帰ってこい。全部一人で決めた埋め合わせをしてもらう」
颯真からそう言われていた。大切な人たちが、すべて決めてから颯真のもとにやってくるから、彼は落ち込んでいた。そのやるせない思いを受け止めるのは自分だと思っていた。
しっとりと温かいものに包まれて、目が覚めた。背中の肌にぴっとりと付いているのは、やはり颯真だ。全裸の潤を抱き寄せて、本人も同じ姿ですやすやと眠っている。
きっと潤が体力の限界を迎えたあと、それでも離れがたく、抱き寄せて安堵して眠りについたのだろうと思う。
体温が伝わると安堵する。自分の体力が先に尽きてしまったことに少し申し訳なさを感じた。
もう少し微睡みたい。瞼が重いと目を閉じる。
帰宅直後、玄関で潤を出迎えた颯真にそのまま手を取られて、部屋に連れ込まれた。きちんと話すという話をしていたが、それより先だと、そのまま颯真の寝室でスーツを剥かれてベッドに押し倒された。
そうなると主導権は彼にある。
潤はアルファの独占欲に晒され、フェロモンに呑まれ、額や耳から足の指まで身体中を愛撫されて快感に震え、キスをされて敏感なところは開かれ解され、とろとろにされて、入り込まれて簡単に果てた。
「まだまだこれからだ」
理性が残る中、いきなり絶頂に持って行かれて息が上がる中、冷静にそう言われて、まだまだあるのかと思う一方、オメガの部分がぐしゅりと濡れて胸が躍ったのも事実。
しかし、そこからが長かった。
気がつけば颯真のフェロモンに飲まれていた。キスをねだり、腰を振り、少しでも止まってほしくて両脚をきゅっと締めて精を搾り取って。
背後から突かれて、注ぎ込まれた。
いつもは体調を気遣ってゴムを着けてくれることが多いのに、昨夜はその余裕もなかったのか、そのままだったように思う。熱い迸りを胎内に感じ、背筋が震え、満たされた吐息を漏らした。
颯真はいつもとは様子が違っていたように思う。
「そうま……」
いつも呼びかけると面倒臭がらずに聞いてくれるのに、昨夜はいくら呼びかけても彼は無言で、潤を背後から攻め立てる。項にキスをして噛み付いて、耳元に強めのキスを落として、所有の証を残した。
言葉がほしい、名前を呼んでほしいと思っても喘ぎ過ぎたのか、声が掠れて思ったように声が出せない。けほけほ咳き込んだが、颯真は無言で潤の中に入り込んでは中を突いてくる。それは快感を伴うものだが、潤の中でだんだん重くなっていく。
身体は快感を拾い、近くに番の体温もある。確かに抱いているのは颯真だと身体では分かっていて、気持ちも繋がっているはずなのに、どこかいつもとは違う。
最初はそこが引っかかって仕方がなかったが、抱かれているうちにどうでもよくなり……、いや、これが颯真の重い気持ちを受け止めるということかと思い至った。この無言の交わりが、颯真の埋め合わせの仕方なのだろう。
そこで、意識的に考えることをやめた。すべてを受け入れる必要があるような気がしたからだ。
颯真になされるがまま、何度も注がれて、下半身は体液にまみれて思うように身体に力が入らなくなって、体力が限界を迎え意識が途切れがちになってようやく、颯真がバスルームに連れていってくれた。
もうどのくらいの時間交わったのかは分からなかったが、結構な時間だったように思う。
正直、長かった。
抱き寄せられて身体にシャワーをかけられて、いつもよりも優しいタッチで身体を洗われて、「大丈夫か?」と初めて声をかけられたような気がした。ようやくいつもの優しい颯真が戻ってきたような気がして、潤は颯真にハグを求めた。
背筋にシャワーを当てながら、颯真が問う。
「お尻の奥も洗うよ? いい?」
そう問われて、どうにもならずに潤も頷く。浴槽に身を預け、下半身のデリケートな場所を無防備に晒して、彼は優しく洗ってくれた。
中を洗われながら、どうにも安堵感が込み上げて視界が潤んだ気がしたが、情けなくて浴室の湿気とお湯で紛れてしまえばいいなと思った。
颯真は怒っていたのだとは思う。その怒りとやるせない気持ちを潤はぶつけられたのだと思ったが、それはおそらく自分が颯真にしたことに違いない。
埋め合わせ、というのはこういうことだったのだろうと思う。
嵐が過ぎて、自分のアルファがいつもの雰囲気になって、少し気持ちが落ち着いたのか気が抜けて、潤はバスルームで意識がすとんと落ちた。
先程まで薄明かりの中でうとうとしていたような気がしたが、気がつけばもう少し辺りが明るくなったような感じ。
「起きた?」
さっきまで寝ていた颯真は、気がつけば起きていた。
「……うん、おはよ」
そう言うと、颯真もいつもの口調で返してくる。
「おはよう」
カーテンは遮光タイプなので外の様子が伺えないが、明け方だろうか。自分のスマホもどこにあるのか……。おそらく剥かれたスーツの中だ。
「今何時?」
「今は九時」
九時! と思わず身を起こしかける。
夜の九時であるはずはないので、朝かと思って血の気が引いた。
完全に遅刻……!
なんで起こしてくれなかったと颯真をなじりたくなったが、彼は「落ち着いて」と背中をさすって嗜めた。
「お前は午前半休。廉と話がついてる」
はい? と思ったが、話をつけてるから落ち着け、ともう一度言われた。
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