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episode 2

人形のようだ―――と、思う。 キラキラと光る髪の毛に、切れ長の深いブルーの瞳と高い鼻梁。高い身長に、長い手足。 アルファという人種はこうも違うものかと、真人は感嘆してしまう。 欠点を唯一あげるとすれば、表情の乏しい所だろうか。一緒に住み始めたというのに、相変わらず何を考えているのか全く分からない。 無表情な顔でフォークとナイフを握るエルドレッドを、ぼうっと眺めた。真人の作ったチキンステーキが、その美しい唇に消えていく。 少し色っぽい。 「真人くん、豆腐は好き?」 「え―――、豆腐?嫌いではないですけど。エルドレッドさんは好きなんですか?」 唐突な質問に盛大に戸惑いつつも、真人は何とか会話を紡いだ。せっかくエルドレッドから話をしてもらったのだから、1秒でも長く、1つでも多く知りたい。 真人の問いに、コクり―――と、エルドレッドが頷く。幼い仕草だ。大人で落ち着いているエルドレッドの意外な動きに、思わず顔が綻んだ。 「美味しい豆腐屋を知っているから、今度、買ってこよう。」 「へえ、楽しみです。あ~、もしかして、和食の方が良かったりしますか?」 「―――まあ、そうだな。」 エルドレッドの言葉に、再び驚く。今年の春に日本に来たばかりだから、まだ食には馴染んでいないだろうと思い込んでいた。 「そうなんですね。てっきり洋食派だと思ってました。オレ、和食の方が得意なんです。祖母に育てられたから、煮物とか、ひじきとか。」 「ああ。でも、箸が使えないから、魚はあまり得意でないのだが。」 エルドレッドの声の響きが、何となく残念そうに聞こえた。表情を見ても、『無』だが。 違うかな、でもな~―――と、迷いつつ真人は口を開いた。 「じゃあ、練習します?教えましょうか?」 「いいのか?」 パッ―――と、エルドレッドの瞳が輝く。口元が緩むくらいの僅かな変化だ。しかし、ここ1週間見つめ続けた真人には、とびきりの笑みに見えた。 ―――喜んでる。 まさか、そんな事で喜ぶとは思わなかった。 エルドレッドの初めて見る表情に、ぼぼぼっ―――と、真人は一気に赤面した。 「真人くん?」 「ぁ―――、いや、はい。任せてください。明日から和食も作りますので、箸も少しずつ使ってみましょう。」 真人が熱い顔を誤魔化すように早口で言うと、エルドレッドが再び目元を緩める。その表情の変化に、落ち着きかけた動悸が、ますます加速してしまった。 正式な番の届け出はまだしていない。真人の提案で、二人は同棲を試している所だ。 お試し期間は1ヶ月。 その間に互いの事を知って、大きな問題がなければ番になる。 エルドレッドは思っていた通りにきちんとした人で、真人からは何の不満もない。あったとしても、オメガの立場に文句を言うなど、もっての他だろう。 じゃあ、何故、こんな提案をしたかと言うと。 番になりたい―――と、エルドレッドから思われたかった。何の興味もないような目で見られたまま番になるなど、とても哀しい。 好きになって、などとは言わないけれど、ちょっとくらい好意を向けて欲しい。 だから、 ―――ちゃんとオレを見てよ。

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