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第7話

それから一ヶ月近く、智樹は店に姿を現わす事はなかった。 アダルトのDVDを返していると、喘いでいる女優が智樹に抱かれている自分と重なった。 あの時、幸せを感じた。ずっと恋焦がれていた人と結ばれたのだ。 だが、すぐに不安は押し寄せた。女性と付き合っている男が、わざわざ彼女と別れてまで男の自分といる意味はあるのか。 またあの映画の結末が蘇る。 アダルトコーナーを出ると、レジ業務に入るべくカウンターに入った。ひたすら返却業務を行いレジに来る客を機械的にこなしていく。 「お願いします」 聞き覚えのある声と共に目の前にカードとDVDが一枚置かれた。 顔を上げなくても分かる大好きな声。 (智樹さん……) 泣きそうになるのを俯き必死に堪える。 震える手でカードを通し、DVDをスキャンした。DVDひっくり返し傷を確認するとケースに収める。そしてそのDVDのタイトルを目にした瞬間、手が止まった。同性愛をテーマにしたDVDだった。 凛は顔は見る事ができなった。 返却日を告げると智樹は何も言わず帰って行った。 それから智樹は二〜三日に一度現れては、同性愛をテーマにしたDVDを一枚黙って借りていくのだ。そこにはいつも隣にいた彼女の姿はなかった。 今日も凛がレジに入るのを狙っているのか智樹は現れて、いつものように同性愛がテーマのDVDが目の前に置かれる。 一体これで何枚目だろうか。おそらく、すでに五〜六枚目になるのではないかと思った。 とうとう凛は口を開いた。 「一体、どういうつもりですか……!」 涙が出そうになるのを、目を閉じて耐える。 「話がしたい。今日、待ってるから」 そう言って智樹は借りたDVDを手にすると、店を出て行った。 凛は涙を堪える事ができなくなりバックルームに入った途端、涙が溢れてきた。 「うわっ、どうしたの三上くん⁈」 バックルームの扉を開けた富田が泣きじゃくる凛を見て驚いた声を出している。 「……っ、す、すみません……、少し、休ませて……下さい……」 その場に座り込み必死に涙が止まるのを待った。だが、涙は止まる事はなかった。 「今日はもういいから、帰りなさい」 富田が凛の背中を優しく撫でた。 「で、でも……っ」 「そんな顔で、接客できないでしょ。ほら、立って」 富田が凛の腕を取ると、立ち上がらせた。 「すいません……」 泣きじゃくる凛の背中を富田はそっと押した。 凛は体調不良という事で早退した。

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