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第10話

数分前… 「え?」 「栗花落…お前をここから逃がしてあげる…」 「ご主人様…?どういうことですか?…俺は…」 「新しい家も全て用意した…これまで…すまなかった…俺は…お前の心を俺は結局奪えなかった…ねぇ。栗花落…俺はね、お前のこと本気で愛してたんだよ。初めて会ったときのこと覚えているかい?」 ご主人様と出会ったのは両親から捨てられたあの日。今でも覚えてる 「君はその日が初めての出会いだったと思っているだろ?違うんだよ」 どういうこと? 「君が住んでいた以前の家を覚えてる?」 「両親と暮らしていたあの場所?」 「そう。その近くに緑がたくさんある大きな公園があったことは覚えてる?」 「はい」 「そこで出会ったんだ。何もかもを失い途方にくれていた俺に君は話しかけてくれた。とても幼かった君が俺の手をとり小さな手で撫でてくれた。何の曇りもなく笑いかけてくれて…俺に生きる希望を与えてくれた…」 「…」 「それから数年がたち俺の親父が経営している施設の門の前に置き去りにされた君を見つけて…すぐにわかったよ。あのときの彼だって…俺はね初めて会ったときから君を探してた…恋してしまってた…どうやったら俺からすれば幼すぎる君の心が手に入るのか…わからなくて君を閉じ込めることでそれを叶えようとした。叶う訳ないのにね…君のこと…愛している…だから…君を…手放そうと思う… あの彼…暁君といったかな?あの子はまだお前のこと愛してる…俺を見るときの何か求めるような視線…それはきっと君への思い…でもあんな形で君の元から離れた自分を責めて何も出来ないでいる。君がいつでも帰ってこれるように家も昔と同じだよ。今日は彼は午後から休暇を取らされている。今ここを出ればすぐそこに彼がいるはずだ。さぁ。行きなさい…栗花落…さよなら…幸せになるんだよ…」 ご主人様から新しい家の鍵と俺の名義で作ったと言う通信機器。俺の名義で作られた大金の入った預金通帳と印鑑。俺のために用意してくれた着替え…その他数日の生活には困らないほどの最低限の荷物を持たされて外に出た。 「振り返るな…さぁ…行け…」 ご主人様の最後の命令。素直に聞いて外に出た。 彼と出会った場所へ足を進めた。会いたくて 会いたくて堪らなかった…本当に俺のことまだ思ってくれてるの? わからない…けれど…少しずつ速度をあげ見つけた先… 「ほしちゃん」 やっと…会えたね… 完

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