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第5話
「おーい!またどっかいってんぞ。これから会議だ切り替えろ」
「…わかっている」
今日は栗花落の伴侶となった暁くんが勤める会社へ行くことになっている。
彼は俺と会うと栗花落が今どうしているのか教えてくれたりする。
俺の本当の思いを知っているから
それで俺がさらに思いを募らせることも知りながら。それが俺の栗花落への償いだと言わんばかりに…本当に…嫌な男だ…
「お久しぶりです…月見里社長」
「久しぶりだね」
「社長自らきていただけるとは」
「君の案件はとても面白いからね。暁くん」
暁くんはあのあと栗花落のために仕事への姿勢を変え尽力し実力が認められこの会社の最年少専務になっていた。
毎回彼は素晴らしい提案をしてくれる。彼の担当した案件は全てうまく行き各方面から称賛されているのだ
仕事の話しは滞りなく終わった。今回も面白いのを作ってきてくれた。これもきっとうまくいくだろう。
話を終えると暁くんが発する
「少し席をはずしてくれませんか?月見里社長と話があるから」
そう言うと暁くんの部下と直哉は部屋をあとにした
「…栗花落は…元気かい?」
「はい。毎日笑顔で過ごしてくれています。仕事も始めたんです。小さな花屋なんですけど」
「ほう…」
「毎日花の香りに包まれて帰宅します。それと…あなたに…会いたい…そういっていました」
「え?…」
「あなたと過ごした日々は酷いことばかりではなかったと…あなたがいなければ生きていられなかったと…そう…言っていました…良ければ会っていただけないでしょうか?」
「…久しぶりに会った栗花落が俺の元へ戻りたいといったら?」
そんなことはありはしないけれど少しくらいの俺の願いを乗せ呟く
「それはありえない」
まぁそうだろう。淀みなく言い切った暁くんを見つめる
「君は酷い男だ」
「あなたが栗花落に…はなちゃんにしてきたことからしたら可愛いものでしょ?」
「…そうだな…」
「会っていただけますか?俺も同伴になりますけどね」
「そうだろうね。今更あったところで栗花落の傷を抉るかもしれない。それでもいいのかい?」
「俺がいますから」
「…本当に…嫌な男だね」
「ありがとうございます」
「わかった。」
「良かった。まだお時間ありますか?」
「あぁ。今日は俺が動くのはこれだけだしね」
「少しお待ちいただけますか?」
そして奥の扉を開き招き入れた相手
「ご主人さま。お久しぶりです」
「栗花落…」
抱き締めたい…連れ去りたい…愛したい…もちろんその思いは叶わないのだけれど…
とてもきれいになった…あの頃より肌艶もよくなって幸せそうだ…この姿に俺がしたかったのに…間違えてしまったから…
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