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第6話
「ご主人様…俺…あなたにお礼言いたかったんです…あの日…俺を拾ってくれて…ありがとうございました…あなたがいなければ…あの時引き取ってくれなければ俺はもっと悲惨な状況だったのかもしれない…どこかで野垂れ死んでたかもしれない…あの屋敷にいるのは苦痛ばかりではなかった…確かに幸せな時期も存在していたのです…あなたの本当の優しさや寂しさ…今ならわかります…俺を…愛してくれてありがとうございました」
「…また戻ってくるかい?そしたら今度は大切にするよ」
「それは出来ません…彼がいてくれなければそれもいいと思ったはずです。しかし…今俺には彼が…明星がいるから…彼以外と生きる選択肢はないのです。だから…もう…忘れてください。俺のことは。俺はあなたを愛していました。その形はあなたとは違うかもしれない。でも確かに愛していました。
貴方はあの日突如人が変わったように俺にあの仕打ちをし始めた…とてもとても怖かった…辛かった…苦しかった…悲しかった…でもどこかに希望があった。きっと前みたいに一緒に笑えるときがくる…だから…耐え続けた…でも…それがいやになってあの俺の名と同じ時期に…逃げ出した…でもあの時そんな思いになって…逃げ出していなければ彼には出会えなかった…自分の身に起こったことを全て受け入れ、それごと彼が今愛してくれている…だから…俺はあなたの元へは帰れない。でも…勝手な思いですがあなたには幸せになって欲しいのです。貴方を…あなたの全てを愛してくれている人が必ずいるから…だから…その人に出会えたら…貴方の…本当の笑顔をまた見せてください…知ってたんですよ。あの頃から嘘の笑顔を被っていたこと。本当は…俺にあんなことをして…苦しかったこと…だって…俺は貴方を愛していたのだから…」
「…栗花落…」
「はい」
「俺はお前を愛してた…いや…いまでも愛している」
「ありがとう…でも…ごめんなさい」
そう言うと暁くんの元へ戻り彼の胸に飛び込んでいく
「俺は…俺の心は…体は…もう全て…彼の…星ちゃんのものだから」
「…君が幸せで良かった…相手が暁くんで良かった…」
「ご主人様…ありがとうございます。さようなら…」
「あぁ。さよなら…」
これで先に進めるはずだ…きっと…これからも俺は愛しい人と同じ名のこの時期を迎えれば思い出すのだろう。でも…それがいつか思い出に変わるように…俺は進むしかないのだ…後ろにはいけないのだ…
背を向け扉の外に出る
「社長…」
「…直哉…このまま送ってくれ…」
「わかった」
栗花落の前で涙は見せられない…もう少し…もう少しだけ…
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