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天気雨

リビングの上に置いてあった壮史の携帯が着信を知らせている。 「そーう、電話鳴ってる!」 ちょうど2人ともが別々に掃除をやっていた。 「悪い、出てー」 寝室からの壮史の声に携帯を見ると、母上の表示。 何度見ても笑える。 「もしもし、麻衣さん?和希」 電話から元気な明るい声がして、そう言えばしばらく会ってないなと思う。 『かずちゃーん!元気?もう2人とも全然顔出さないんだから!』 「ごめんごめん、壮史も俺も元気だよ」 笑いながら返事をしたところで、携帯が奪われる。 「何、なんの用?母さん」 母親と話す壮史を横目に見ながら台所の掃除に戻る。 俺の母親は俺が3歳の時に出ていった。 何一つ、面影すら覚えていない。 父親はいたが、仕事仕事と、毎日日付けが代わってからの帰宅ばかりだった。 母親が出ていってからはそれがさらにひどくなったようだ。 俺の面倒を見てくれたのは隣の部屋に住んでいた相澤家族だった。 壮史や弟の皇史と同じように接してくれた。 俺の…もうひとつの家族だ。 「…それ、本気?今どこ。えっ!?」 滅多に聞くことがない壮史の怒りを押さえるような低い声に壮史を見る。 ピーンポーン 部屋のチャイムが鳴った。

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