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天気雨
「お前、もう来んな!彼女といたらいいだろ!」
あ!と思った。
言ってしまった。
気まずさと悔しさとヤキモチをやいたような自分の発言に和希は壮史から顔を背けた。
もう泣きそうだった。
小さい頃から何でもそつなくやってのける壮史と違い、自分はいつでも必死でやっても完璧とは程遠く、よく拗ねて泣いていた。
麻衣が抱き締めてくれながら、
壮ちゃんは壮ちゃん、かずちゃんはかずちゃん、
どっちもいい子、どっちも頑張るいい子、と何度も慰めてくれた。
それでも劣等感は無くならない。
いつか壮史を追い抜きたい、壮史よりも上にと、
壮史に対する異常な程の執着は劣等感故のものだとずっと思っていたのに。
まさか何もかもを自分の物にしたいとゆう独占欲と愛情だったなんて…
ふわりと抱きしめられ、和希は身体の動きも思考も止められた。
何が起こっているのか。
壮史の腕が和希の身体を包むように抱き締めている。
これはどういうことなのか。
和希は言葉だけでなく、呼吸までも止めて壮史の腕の感触をただ追っていた…
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