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天気雨

「軽蔑するだろうから黙ってたかったけど…」 壮史の声がすぐ近くで聞こえる。 こんな近くにいるのは保育園の頃から以来かもしれない。 いつの間にこんなに低く甘い声になっていたのだろう。 和希はぞくりと身体が小さく震えるのを感じた。 「さっきの、見た?」 「見て、はない…」 「ナンパしてきた名前も知らないお姉さん。後腐れないからって誘われて、ヤった」 「お、お前最低っ」 「ちゃんと避妊したし、合意だけど?」 そう言われては多くを突っ込めない和希がいた。 「…女を知ってると男とする時にも優しくできるって聞いたから」 …なんて言った? 壮史の言っている意味がわからない。 和希の身体に回された壮史の腕に力が入る。 和希の項に頭を擦りつけるようにしながら、壮史は緊張したような低い声で言った。 「俺が抱きたいのは…抱きたいと思うのは和希だけだよ」

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