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天気雨

俺、ちゃんと生きてる? 俺の心臓、ちゃんと動いてる? 意思とは関係なく脳が和希の手をぴくりと動かし、和希はそこで漸く現実だと理解し始めた。 壮史、震えてる… 和希はそっと壮史の腕に手を添えた。 ぴくりと小さく反応した壮史の身体にふっと笑みが零れる。 和希は身体ごと壮史の方をゆっくりと向くと、近い距離のまま壮史をじっと見つめた。 …わかってる。 言葉に、口にしないと伝わらない。 でも…怖い。 でも……伝えたい。 好きだと伝えるのがこんなに難しく、胸が苦しくなるものだと思ったことはなかった。 壮史の手がそろそろと和希の顔に伸びてくる。 触れるか触れないかの壮史の遠慮がちな手に、自分の手を重ねて頬に置いた。 「和希…」 重く低く、でもこれまでで1番甘い声で呼ばれ、心臓が爆発してしまうかと思った。 目を伏せた壮史の顔がゆっくりとさらに近くなる。 壮史の唇が重なっても和希は目を開けたまま止まっていた。 全身が心臓になったように、やけに激しい鼓動が響いて聞こえてくる。 「付き合った子と」 「…え?」 「キスした?」 うんと頷く。 壮史の手が頬から首に滑らされる。 「深いキスも、した?」 首に手を置いたまま親指で耳朶を撫でる。 またうんと頷く。 「乳首は?」 「え?そ、そんなとこ」 「ない?……じゃあ、ここは?」

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