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梅干しのヤキモチ

「和希ちゃーん久しぶりー!!」 がっちりときつく抱きしめられた和希はその腕の中から顔を出すと、金魚のように酸素を求めて口をパクパクさせた。 「涼さん、苦し…」 「あぁ、ごめんごめん」 笑いながら腕の拘束を解く涼二を、悪いとは思っていないだろうなと和希は苦笑いをしながら見上げた。 初めて会った時もこんな感じだったんだよな… 和希は原田に初めてこの店に連れてこられた時の事を思い出していた。 住宅街のすぐ近くにある、昔ながらの商店街の半ばほどにある居酒屋風飲み屋。 店の名前は【ジャングル】。 その名前の通り店に入ると土と青々とした緑の匂いがした。 決して広いとは言えない店内にはあちこちにでかい観葉植物が置かれ、ジャングルのようだと和希は思った。 店主が好きなんだって、と原田が苦笑いをしながら教えてくれる。 邪魔なんだよなーと、眉を潜めながら長身を屈めて歩くのを後ろから見ながら思わず吹き出した。 店の中をキョロキョロ見回していると、厨房から店主らしき男が出てくる。 店主の…なんでしたっけ名字、となんともしまらない紹介をした原田の頭を小突きながらその男は和希にニコリと笑いかけた。

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