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梅干しのヤキモチ
タクシーで部屋まで帰る間、和希の震えも涙も止まらなかった。
和希を見る壮史の顔は悲痛に歪んでいて、泣き出しそうなその顔を見ると余計に涙が止まらなかった。
部屋につき壊れもののように丁寧にソファに降ろされると少し落ち着いた。
ペットボトルの水を渡され、蓋を開けようとするが震えで開けられない。
壮史が一旦それをとりあげ、蓋を開けてわたしてくれる。
水を飲もうと口に当てるが、それも上手くいかず、和希の目にはまた涙が溢れた。
壮史がペットボトルを取り上げ、水を含むと、
和希の首の後ろに手を回し、ゆっくりと唇を重ね和希の口の中に水を流し込んだ。
何度かそうやって水を飲ませてもらうと和希の涙も止まっていた。
壮史はふわりと和希を包むように抱き締めると髪を撫で、深く息を吐いた。
「痛いとこないか?」
和希が壮史の背中に腕を回しながら首を横に振る。
「…何された?」
低い壮史の声に和希の身体がびくっと震えた。
「ごめん、違う。和希に怒ってるんじゃないから」
髪や背中を撫でる壮史の手はいつものように優しい。
和希も詰めていた息をそうっと吐き出した。
「キスと、…少し身体触られただけ」
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