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誕生日のユウウツ

「和希、今年どうする?」 壮史の言葉に和希はカレンダーを見て止まる。 大きなため息を吐き出し、頭をがしがしと掻いた。 自分の誕生日がこれほど嫌になったのはあの家を出てからだ。 のしっと背中に乗られ振り返ると、壮史が和希の身体に腕を回しながら笑う。 「一日中セックスする?ほら、前にやったろ、スローセックス。和希アレ好きだろ」 「…やらない」 冗談だよと和希の頬にキスをすると壮史は離れた。 どこまで冗談なのかわかりにくいんだよ… 和希はまたカレンダーを見てため息をついた。 元々住んでいたあの家からも大学には通えた。 だが、和希はどうしても出たかった。 父親が嫌いな訳ではない、ただ単に合わないのだ。 親子でも合わないものは合わない。 ほとんど顔を会わすことはなかったが、大学入学を期に離れたかった。 父親らしいことを何かしてくれたことはなかったが、ひたすら仕事をやっていてくれたおかげで金銭的に困ったことはなかった。 一人暮らしをできるのも父親のおかげだ。 …結局は一人暮らしではなくなってしまったが。 離れた途端、それまで祝ってくれたことなどなかった和希の誕生日に連絡をくれるようになり、 一緒に食事に行くことになっていた。 また今年もその日がやってこようとしていた…

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