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誕生日のユウウツ

いろいろと突っ込みたいところはあるが、墓穴を掘りそうでそれも出来ない。 和希は居た堪れない気持ちでキッチンからコーヒーを持ってリビングにいった。 来てからずっと立ちっぱなしだった2人は漸く腰を降ろす。 「和希もごめん」 頭をさげる皇史にううんと首を振って笑う。 「それより皇史、大学行かないって?」 うんと頷く皇史を見ながら壮史はコーヒーを飲む。 「俺、美容師になりたくて」 だから専門学校に行こうと思ってると皇史は言った。 「ずっと壮史が羨ましくて。 これまでたぶんずっと壮史の真似しかしてなくて、だからちゃんと考えたんだ」 壮史は皇史の頭をぐりぐりと撫でた。 お兄ちゃんの顔の壮史はすごく優しく、すごくかっこよく見えた。 じゃ、後でなと、玄関先で皇史を見送る。 出て行こうとした皇史はあ、と振り返った。 「父さんも俺も2人のこと反対してないから。 他の男だったらわかんねーけど、和希ならいいよなって。俺が結婚して相澤継ぐから、壮史は和希を幸せにしてやれよ」 じゃーなーと皇史は言うだけ言って出て行った。 この、なんとも言えない空気をどうしてくれるんだ……

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