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贅沢なスレ違い

次の日、大学で顔を合わせた原田は改めて礼を言った。 和希がせめて晩飯だけでも作りに行かせてほしいと言うと、原田は眉を下げた。 「でも…戸川」 「無理はしない!できる範囲でやらせてほしい」 そこへ向こうのほうから手を振りながらおーい!と声がかかる。 渡邉と武市だった。 2人が側に来ると、原田はまた頭を下げて礼を言った。 「豪!今日もコインランドリー行くだろ? 昨日の残りと今日の分まとめて片付けちまおうぜ!」 「戸川、原田んちの近くのスーパー、今日挽肉特売だからハンバーグにする?」 原田は涙を溢れさせてうおんうおん泣いた。 和希ももらい泣きしそうになり、唇を固く噛んだ。 原田の背中を優しくトントンと叩く武市。 一人わたわたと慌てる渡邉。 和希はその光景を見ながら微笑んだ。 4人で電車に揺られ、原田の家に向かった。 途中、ジャングルの前を通る。 あれ以来もちろん来ていない。 原田もバイトを辞めてしまった。 後味の悪さは感じるが、和希がどうこうできるものでもないと思った。 どん、と身体に衝撃があり、振り向くと圭だった。 「和希ちゃん!今日も来てくれたの!?」 和希に抱きついたまま圭はニコニコ笑う。 頭を撫でながら、俺だけじゃないよと先を歩いていた渡邉と武市を指さすと圭はやったー!と飛び跳ねた。

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