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贅沢なスレ違い

和希が家に帰ると、壮史はすでに帰っていたようで部屋の奥からお帰りと声がかかった。 リビングのドアを開けるとソファに壮史が座っていた。 和希は何も言わずに壮史に抱きついた。 一瞬驚いたように息を飲んだ壮史もすぐに和希の身体に腕を回し優しく抱きしめ返す。 壮史の手が和希の髪を撫で、首筋にキスを落とした。 「何かいい事あった?」 壮史が和希を膝の上に抱き上げ乗せながら聞く。 和希が原田家でのことを話すと壮史は良かったなと頬を撫でた。 「あ、の、これ………一緒に行かない?」 和希はそっぽを向きながら壮史に言った。 壮史はふっと苦笑いをして和希の顎を捕まえ自分の方へ向かせた。 「他の誰かと行くって言ったらそれこそお仕置きじゃ済まない」 思いの外真剣な壮史に和希は思わず笑ってしまい、壮史を強く抱きしめた。 軽いキスをして、物足りないと和希が深いキスをと唇を重ねようとした時。 壮史があ、と声を出した。 「そう言えば俺もバイト先でもらったんだっけ」 ソファの横に置いてあったバックを漁り、封筒を取り出す。 開けてみるとそれはホテルの宿泊券だった。 2人は顔を見合わせて笑う。 その宿泊券は渡邉と武市にあげたら?と壮史がいったのでそうすることにした。 「楽しみだな、旅館」 「俺らには贅沢すぎるけど…」 「たまにはいいんじゃない?頑張った和希へのご褒美だしな」 壮史は笑って言いながら和希の額に優しいキスをした。

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