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犬も喰った喧嘩
数日前から壮史の機嫌が良くない。
それはわかるが、原因がわからない。
聞いてみても、自分で考えろとさらに機嫌が悪くなるし。
和希は常に頭痛がするような重たい頭を軽く振った。
食欲もあまりない。
学食を頼んだはいいが、あまり食べられず、かと言って残すことも気が引けてしまい、
冷めていく料理を前にため息をついた。
「おーい、戸川!」
でかい声に顔を上げればやはり渡邉だった。
珍しく一人だった渡邉は、和希の前の席に座ると食欲ないのか?と心配そうな顔をした。
「渡邉はさ、武市とケンカとかしたことある?」
和希が何気なく聞くと、渡邉はすすっていたうどんを吹き出した。
ごめんごめんと謝りながらテーブルを拭く和希に、真っ赤になった渡邉が慌てふためく。
「お、まえ、こここ恋人じゃあるまし、けけけけんかとか」
「うん、そうだよな、ごめん、間違えた」
…聞く人を。
付け加える言葉は口にせず、和希はまたため息をついて、ここ数日の壮史との会話を思い返した。
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