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お好みのままに、は難しい

原田家にもらった高級旅館に泊まる旅行が目の前に迫っていたある日。 和希は大学からも家からも少し離れた場所に来ていた。 デパートやセレクトショップが建ち並ぶ街に久々に来たのは、壮史の誕生日プレゼントを買うためだった。 物欲のない和希は服やバッグなんかには興味なく、また人混みも苦手なため、そういった買い物はネットでポチリと済ませていた。 だが、壮史の物となると話しは別だ。 なまじ大抵の物は似合ってしまう壮史、それが逆に和希を大いに悩ませてしまっている。 贈るなら喜ぶ物を贈りたい。 しかし…和希から贈ればこれまた大抵の物は喜んでくれそうだ。 あちこちの店に入り、あれこれ見れば見るほど悩む。 加えて平日の昼間というのにこの人の多さ。 和希は一旦休憩することにし、近くのコンビニに入るとコーヒーを買い、外のベンチに座った。 「和希ちゃん?」 顔を上げるとジャングルの店主の涼二だった。 「………涼さん」 「買い出しに来ててね。和希ちゃんはどうしたの?」 「壮…友達のプレゼントを買いに」 涼二は和希の隣に距離を空けて腰を降ろすといい物は見つかった?と聞いた。 力なく首を振った和希にそうかと言うと、 「近くの裏道のとこにいい店があるけど、覗いてみる?」 ベンチから立ち上がりながら和希に言った。

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