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お好みのままに、は難しい
赤い看板、赤い看板。
左前ばかりを見ながら歩いていると、一際目を引く真っ赤な看板が見えた。
ファボ…リート?
イタリア語?
店のドアを開けると柑橘とグリーンのいい香りがした。
「いらっしゃい、誰かからの紹介?初めてだよね?」
30代くらいの顎髭が似合うワイルドな男が声をかけてきた。
「あの、里中さんって方に…」
「あぁ、涼二か。どうぞ、好きに見ていって」
服にしても小物にしても壮史が好きそうだ。
身につける物だとしたらネックレスかブレスレット…
でもどっちも壮史のイメージではない気がする。
和希が悩みながら店内をキョロキョロと歩いていると、さっきの男から声がかかる。
「かなり悩んでるね、話し聞こうか」
レジカウンターの中から身を乗り出しながら和希ににこりと笑ってみせた。
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