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お好みのままに、は難しい

壮史へのプレゼントは旅行バッグのポケットに忍び込ませた。 和希は久々に高揚するほど旅行を楽しみにしていた。 2日間だが、2日間ずっと2人でいられることすらままならないことも多々あるのだ。 予定もなく2人でずっと一緒にいられる、それが和希にとって何よりの贅沢だった。 金曜日、チェックインの時間に合わせて旅館に着くと、ロビーでお抹茶とお饅頭のおもてなしを受けた。 一階の奥の部屋へと案内され中に入ると広さに2人ともが驚く。 中居さんから全ての部屋がスィート使用になっているとの説明を受ける。 その中居さんは部屋へと入ってこないため、首を傾げていると、 「こちらから先はお客様のプライベート空間となりますため、わたくし達スタッフはお夕食以外中へは入りません。 ご朝食の際にもフロントから内線にてご連絡を致しますので、お食事場所まで起こしくださいませ」 丁寧に説明を受けてから、急に二人きりになり、照れ臭くなった和希はパンフレットに手を伸ばした。 庭に面した部屋付き露天風呂は掛け流しで24時間入浴可能、 冷蔵庫にある飲み物は全て無料、 アメニティも充実。 夕食のみ部屋で、朝食はブュッフェスタイル。 なんといってもこの静けさ。 落ち着ける空間。 身体を大の字にして寝転びたくなる。

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