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大爆発の独占欲

渡邉の頑張りのおかげか、それからは特に何もなく、壮史の機嫌も良かった。 和希が日々疲れて窶れていく渡邉を気にし始めたある日、 その窶れた渡邉がヨロヨロと和希を呼びに来た。 「相澤担当、これからスピーチ練習があるからこないだの撮影教室に集合」 「渡邉、大丈夫か…」 渡邉とトボトボと教室までを歩きながら和希が言う。 「相澤、女嫌いなの?何かトラウマでもあるの?」 渡邉はもう泣きそうだ。 「女嫌いでもトラウマもない、と思うけど…」 「あんだけイケてんならちょっと相手してやるくらいのスキル持てよ!てゆうか、戸川が持たせろよ! 話し掛けてくる女子がいるだけでものすごい睨んでくるんだって!」 渡邉は泣き真似をしながら和希に凭れかかる。 さすがに気の毒になり、渡邉の背中を擦ってやると、 あ!と言った渡邉の頭が和希の顎に当たり、和希からタイキックをくらわされた。 「なんだよ、急に!」 「一人だけいたわ!女子で相澤が優しくしてるヤツ!」 今日もたぶんいるぜーと渡邉はいきなりご機嫌になる。 その子がいると相澤がイライラしないんだよなー、と渡邉が言った。

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