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初心にかえる初詣
次の駅で降りた2人は和田が掴んで離さなかった痴漢男を駅員に引き渡した。
駅員室に案内され、駅員が警察に連絡をしている間、一度その男と目が合った。
その男は和希を見てニタリと笑った。
和希を途端に強い吐気と震えが襲い、駅員室を飛び出してトイレに駆け込んだ。
鍵を閉める間もなく便器に顔を突っ込んだが、吐気だけが上がり、何も出ない。
和希の目に涙が浮かぶ。
「戸川、大丈夫?」
控えめなノックがし、和田がそっとドアを開け顔を覗かせる。
「…吐けない?」
口を開けると何かが出そうで、和希はうんと首を縦に降ろした。
「吐いた方が楽になる?」
迷ってから和希がまた首を縦に降ろすと、和田は個室から一旦出て手を洗ってから戻ってきた。
「噛んでもいいから」
和田はそう言うと和希の口の中に指を深く入れてきた。
途端にえづき、和希が和田の手首を掴み口から出そうとするが、それを和田の手が止める。
「戸川、気にしないで出して」
舌の奥を指で撫でるように触られ、和希は嘔吐した。
便器を抱え込むように嘔吐を続ける和希の背中を和田はずっと擦ってくれていた。
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