235 / 412

初心にかえる初詣

昼時で誰もいなくなった、2人が講義をとっている教室に和田は和希を連れてきた。 教室に入っても和田は和希の手首を離さなかった。 「和田、手……」 「好きだ」 和希が和田の手を解こうと和田の腕に手をかけた時、和田が一息に言った。 動きを止めたままの和希に、和田が答えを求めるようにさらに口を開いた。 「戸川が、好きだ」 視線を落としていた和希がゆっくりと顔を上げ和田と視線を合わせる。 俺も好きだと言えたら。 言って、柔らかく笑う顔にしてやれたら。 悲しそうな、困ったような顔をさせたいわけではないのに。 でも自分の好きと和田の好きでは意味が違う。 和田の望むであろう好きを和希は返してやれない。 自分の好きは、 愛しい、恋しい、そういった愛情の全ては壮史にしか向かないのだ。 「……………………………………ごめん」 声を振り絞るように和希は言った。

ともだちにシェアしよう!