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初心にかえる初詣

「付き合ってる人がいる?」 口を開くと涙声になりそうで、和希はうんと頷く。 「俺にほんの少しの可能性も、……ない?」 和田の低い声が近づいたのに和希の身体がぴくりと揺れる。 「戸川、ダメだよ、振るんなら希望を持てないくらいキッパリ振ってくれなきゃ」 「……………っ」 和田の指が和希の指輪をそっとなぞった。 「……いつの間にか戸川を見てた。 講義が一緒の時は戸川を探してた。 大事な人がいるってわかってても、きっかけをずっと探してた」 和希はそろそろと顔を上げ、漸く手首を掴んでいる和田の腕から目を離す。 そして久しぶりの和田の顔を、眼鏡をじっと見つめた。 「眼鏡、直ったのか」 「今それ言うの」 和田は吹き出すように笑った。 俺一世一代の告白してるのに、と苦情も付け加えた。

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