236 / 412
初心にかえる初詣
「付き合ってる人がいる?」
口を開くと涙声になりそうで、和希はうんと頷く。
「俺にほんの少しの可能性も、……ない?」
和田の低い声が近づいたのに和希の身体がぴくりと揺れる。
「戸川、ダメだよ、振るんなら希望を持てないくらいキッパリ振ってくれなきゃ」
「……………っ」
和田の指が和希の指輪をそっとなぞった。
「……いつの間にか戸川を見てた。
講義が一緒の時は戸川を探してた。
大事な人がいるってわかってても、きっかけをずっと探してた」
和希はそろそろと顔を上げ、漸く手首を掴んでいる和田の腕から目を離す。
そして久しぶりの和田の顔を、眼鏡をじっと見つめた。
「眼鏡、直ったのか」
「今それ言うの」
和田は吹き出すように笑った。
俺一世一代の告白してるのに、と苦情も付け加えた。
ともだちにシェアしよう!