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酒とスパイスのチョコレート
「こんにちはー」
ピンポンを押さずに原田家の玄関を開け、お邪魔しますと言った和希は家中に漂う甘い匂いに鼻を鳴らした。
バタバタと足音がして、咲と凛が慌てて玄関にやってくる。
「和希ちゃんはキッチン来ちゃダメ!」
脱いだ靴をまた履かされそうになっているところに豪が帰ってきた。
「おぅ、おかえり、豪」
和希に言われて豪はニコリと笑ってただいまと答えた。
頻繁に原田家に顔を出すようになり、和希は豪を名前で呼ぶようになった。
原田家で原田と呼ぶと全員が振り向くので、もう色々と面倒くさくなったのだ。
寒くなってから祖父母の体調があまり良くないらしく、母親はどうしても祖父母の世話が中心になり、
ずっと顔を出していた和希は迷惑にならないように、
気を遣わせないように少しずつ手を出していた。
テストが終わり少し間が空いた訪問だったのだが、まさか玄関で追い返させられそうになるとは思ってもいなかった。
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