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酒とスパイスのチョコレート

トントンと階段を降りる音が聞こえ和希が顔を上げるとささげが音の主に駆け寄る。 豪がささげを抱き上げるとささげは豪の顎に顔を擦りつけ甘えた。 「豪ん家の猫たちはみんな人懐っこいな」 和希が掃き掃除を再開させながら言うと、豪はいやぁと眉を下げた。 「人懐っこい猫の方が少ないんじゃない?」 「そうなの?」 豪はささげを降ろすと玄関マットを持って外に出る。 和希の持っていた箒を貸してと手に取るとパンパンと派手な音を立てて叩きマットの砂を落とした。 「うちのコたちは家族にだけだよ、寄っていくの」 バッサバッサとマットを振ってから豪が中に戻り、マットを元の場所に置いた。 「戸川のこと家族だと思ってんじゃないかな」 それほど頻繁に顔は出してはいるのだが、豪の言葉に和希は嬉しさを隠さずに笑った。 その日は結局キッチンには行けず原田家を後にした。 バレンタインが終わるまでは今日のようにキッチンに入れないかもしれない、次に行く時は何か作って持っていこうと和希は微笑みながら考えていた。

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