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酒とスパイスのチョコレート

一旦チョコレートを意識してしまうとどうしても目も意識もチョコレートに向いてしまう。 ましてやこの時期あちこちでチョコレートが目につく場所で派手に置かれているのだ。 そんなに気になるならあげてしまえばいいものを、和希の中ではあげるとなると好きですと顔を赤く染めながらチョコレートを渡す絵面しか出てこず、 それを自分が壮史にするとなると寒気がするのだ。 朝大学に行く準備をしているとニュース番組でバレンタイン特集をやっているのを、 和希は靴下を履きかけ止まったままで食い入るように見つめていた。 そんな和希を歯磨きをしながら壮史は目の端に捉え、ははんとニヤリ笑った。 「バレンタインかぁ、もうそんな時期か」 和希の肩がわかりやすくびくつく。 和希の耳に唇を寄せ、ついでとばかりに舌を這わせてから壮史は言った。 「和希、今年はくれるの?」 ぶわっと一気に首筋まで赤くなった和希は履きかけの靴下を落としてしまい、慌てて拾う。 「おっ、お前そんな甘いの好きじゃないだろ」 「恋人からのは別だろ」 恋人、の言葉に和希はさらに赤くなりながら黙り込んだ。 そのまま寝室に連れ込みたくなるのをぐっと堪え、壮史は和希の首を下から撫でるようにしながら顎を上げさせちゅとキスをした。

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