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酒とスパイスのチョコレート

バレンタインの数日前から壮史はチョコレートを貰って帰ってきていた。 たいていは義理っぽいチョコレートばかりだったが、 中には本命ぽい物もあり、和希は内心落ち着かない気持ちでいた。 そんな和希を見越して壮史が言う。 「本命がいるって受け取る前に言ってるから」 「べ、別に何も言ってないだろ…」 語尾をもごもごと口籠る和希をすぐさま押し倒してしまいたいのを堪え、そっと抱き寄せる。 いつまでたってもどれだけ抱いても処女のような童貞のようなこの初さはなんだろう。 たまには驚くほど淫らに誘われそのままドロドロに溶けてしまうほどのセックスに溺れてみたい気もするが、 恥ずかしがりながらも快感に抗えず、自分に縋り徐々に甘え身体を開いていく和希が、どんな媚薬よりも壮史には効くのだ。 いつものように髪の中に鼻を埋めてから和希の項に唇を移し、 軽く噛み痕を付けながら和希を長い間抱きしめていた。

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