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酒とスパイスのチョコレート

和希は何も言わずに寝室に行くと、顔を赤くしながら戻ってきて壮史の手に持ってきた箱をグイと押し付けた。 「……風呂入ってくる」 それだけを言うと和希は逃げるように風呂場に消えた。 ふはっと出た笑いを隠すこともせず壮史は肩を揺らして笑った。 丁寧に包装紙を剥がし箱を開けるとチョコレートに何やらツブツブとした物が埋まっている。 噛みつきパキリと割って食べて見ると控えめな甘さが最初に舌の上で溶け、最後に感じるのはピリッとしたスパイスの味と香り。 「旨い」 思わず口に出した感想は風呂に入っている恋人には届かなかった。 その恋人は風呂場でも未だ赤い顔で緊張していた………

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