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酒とスパイスのチョコレート

鳴り続ける呼出音にイライラする。 プッと電話が繋がった瞬間和希は用件だけを叫ぶように言った。 「鍵は!?」 『あー?』 「鍵!手錠の鍵は!?」 一瞬にして西園寺は状況を把握する。 ………ははーん。 もうニヤニヤが止まらないが、どうせ和希には見えないのだ、西園寺はニヤニヤした顔のまま素知らぬ声を出した。 『鍵?入ってるだろ?』 鍵はわざと抜いておいた。 そもそもが玩具のような手錠、鍵は付属品でついているだけの代物で、鍵がなくても簡単に手錠は外れるのだ。 鍵穴があれば鍵がなければ開かないと思い込んで、 慌てながらもイチャコラするんだろうなと思っていた西園寺は、 和希の慌てぶりに想像を遥かに超えた面白ろそうな状況に笑いを堪えきれずにいた。 やべー、すげー楽しい……… 「入ってない!どうやって外すの!?」 『あー、俺今買い付けの出張中でよ、帰るの明後日だからそれまで何とか頑張ってろよ、じゃーな』 言うだけ言って電話を切ると堪えていた笑いを吐き出した。 西園寺は携帯をタップし、メールを送る。 パニックになっている小動物のようなヤツの恋人に、 [鍵はなくても外せるよ] と書くと、思い出したように一言付け加えた。 [旨い酒一杯奢れよ] と、打つと送信をタップした。

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