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酒とスパイスのチョコレート
寝室で携帯を持ったまま和希はそれこそパニックに陥っていた。
どうしよう…
どうしよう………!
鍵がないのではどうにもならない。
このままでは壮史に見られてしまう。
そういう趣向が欲しいのだと勘違いされてしまう。
壮史とならそれもかまわないのだが…いつもの行為が物足りないと思われるのは嫌だった。
なすすべもなく寝室をただウロウロと歩き回っていると、
閉めることすら忘れていた寝室のドアがさらに開けられた。
「和希?何してんの」
和希は咄嗟に手錠のついた左手を背中に回す。
「い、いや、何でも!」
和希の不審な態度に首を傾げたが壮史は深く突っ込まず寝室には入って来なかった。
ホッと息を吐いたが何も解決できてはいない。
これをどうやって誤魔化せば…
和希はもう泣きそうだった。
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