268 / 412

酒とスパイスのチョコレート

「チョコレート食べよっか」 バレンタインだし、と壮史は和希をソファに座らせると冷蔵庫にしまっていた麻衣からのチョコレートを持ってくる。 和希の隣に腰を降ろすと箱を開ける。 また酒が強く香った。 生チョコを一つ取り上げ口に入れる壮史を和希がじっと見つめる。 「あ、旨い」 また一つチョコを取り上げ今度は和希の口に持ってくる。 恐る恐る口を開けるとコロンとチョコを入れられる。 「カルヴァドスって酒が入ってるらしい」 箱についているパンフレットみたいな紙を見ながら壮史が言った。 濃厚なチョコの香りと味にりんごのような香りとほんのりする酒の味。 小さい生チョコだったが、和希の身体がかあっと熱くなった。 「和希のくれたのも旨かった、食べる?」 立ち上がりかけた壮史の服を和希が掴んだ。 「これ、食べたい……」 離れてほしくなくて咄嗟に言った和希は、 赤くした顔で壮史にバレてしまっているとは微塵も思っていない。

ともだちにシェアしよう!