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大人でも子供でも

「…泣いてないって」 涙声のくせにあくまでも強がる和希を西園寺はよしよしと続けて撫でてやる。 「じゃーさー、和希はどうよ? 自分の知らないうちにイケメンがもっと和希といたいなー、しゃべりたいなー、かまってほしーなーって思って悩んでたとしたら?」 俯いていた和希の顔が少し上がる。 「一人で考えて悩んでないで話してほしくないか?」 うん、と和希が頷く。 「じゃあイケメンも同じなんじゃねーの? かまいたくてたまんねーってアッチも思ってると思うぜ」 西園寺の手が頭から離れ、その手を追うように和希が顔を上げるのを西園寺は笑ってしまいながらタバコに手を伸ばす。 「疲れてても忙しくて寝る暇がなくても、 好きなヤツの全部が栄養剤になったりすんだよ」 おっさんになると特にな、と西園寺が片目を瞑ってみせる。 「無理して大人ぶってないでガキならガキらしく甘えてみろって」 いつものからかうような西園寺の物言いに和希はムッとするが、渋々という感じを出しながらもうんと頷いてみせた。

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