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どっちがお好み?

広場はあっという間に人で溢れかえった。 前評判の高い店には長い行列が出来、渡邉と和希は行列を行き来しながら最後尾の案内に走り回った。 豪の熊さんは子供たちに大人気で豪に抱っこされて写真を撮るための行列までできていた。 小さな兄弟のいる豪は子供の扱いに慣れていて、そのほのぼのとした様子に和希も思わず自分の携帯で写真を撮った。 「ねぇねぇ」 和希が振り向くと高校生くらいの男3人が和希の前に立っている。 あまりしゃべるなと西園寺に言われていた和希は声を出さず首を傾げた。 「うわ、マジでかわいいっ」 「一緒に写真撮っていい?」 テンションの高い高校生たちに和希は貼り付けた笑顔でうんと頷いて見せた。 「ねぇ、連絡先交換しよーよ!」 高校生のうちの一人が和希の肩を抱きそう言ったのと同時に肩に乗った手が叩き落とされる。 「いって、なんだよ…ひっ!?」 振り返ると怒った熊さんがふーふー息を吐きながら高校生たちを睨んでいた。 高校生たちが逃げるように去って行くと豪はほっと息を吐き和希にニコッと笑った。 「豪、ありがと」 でかいけどニコニコと笑うかわいらしい熊さんと、 清楚で可憐なメイドさんがニコニコ笑い合う何とも和む光景に、 いろんな角度から写真を撮られていることなど本人達はまるで気付いていない。

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