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どっちがお好み?

お昼時になるとさすがに慌ただしくなった。 人が多すぎて最後尾の案内も満足にできなくなってきていた。 迷子も増え、豪は迷子を抱えてセンターと広場を行ったり来たりと走り回っていた。 混乱はないかと広場を一周して元の位置に戻る。 あっ!という声に思わず振り返るとイベントとは関係なく散歩に来ていたおじいさんの犬が普段いない人の多さに興奮したのか走り出した所だった。 リードを引っ張られおじいさんが転んだのを同じように見ていた渡邉に頼み、和希はプラカードを置きパンプスを捨てるように脱ぐと走っていった犬を追いかけた。 イベント広場を抜けセンターを横切り僅かに確認できる赤いリードを追い走る。 ふと赤いリードがゆるゆると止まるのが見えた。 走るのを止め切れた息を整えるようにしながら見えた方向に歩いて行くと、誰かが抱き上げたのか赤いリードが地面から宙に浮いた。 よかった… 安堵のため息を吐きながら人影に近づき、その人影を見た和希がまだ荒い息を止める。 逃げたパグを抱っこしていたのは壮史だった。

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