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どっちがお好み?

壮史が和希に気付き、パグから視線を移す。 「あれ、君…」 壮史はよそいきの笑顔を貼り付け和希に一歩近く。 「この子、君の犬?」 和希は緊張しながら小さく頷いた。 はいと壮史が和希の腕にパグを渡してくれる。 ありがとうと言いたいが、声を出してしまうとバレてしまう。 じゃと壮史がくるりと背を向け歩き出そうとした瞬間、和希は咄嗟に壮史の服を掴んでいた。 えと和希を振り返る壮史に我に返った。 「ぁっ」 壮史の服から手を離すと和希はパグを抱いて来た道を走り戻った。 バレてないよな。 頼む、バレないでくれ! 和希は切実に願いながら走っていた。

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