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どっちがお好み?
「すみません、おさわり禁止なので」
聞き覚えのありすぎるその声に顔を上げれば、一番会いたくて会いたくない男がいた。
壮史はいつもと違い髪の左側だけをワックスで後ろにながし、黒の燕尾服をビシッと着こなしていた。
うわぁ。
うわあぁぁぁ。
どうしよう、格好よすぎてまともに見られない。
ちらちらと盗み見る和希に気付くと壮史がふっと笑い和希の頬に手を伸ばす。
「生で見るとやべーな、めっちゃかわいい」
引き寄せられるように壮史の腕の中に収まると和希は今更ながらに驚いて顔を上げた。
「壮史、俺ってわかったの?」
「昼間も一瞬そうかなとも思ったけど、声聞いたら一発でわかった」
顔を上げた和希の顎を壮史の手が固定するように持ち撫でる。
ハイヒールを履いているためいつもより壮史の顔が近い。
「…すげーキスしたい」
「く、口紅とれるからダメだって」
「ちょっとだけ、一瞬」
「ぜ、絶対一瞬じゃ済まないだろっ」
回りが全く見えなくなった2人の後ろで大きな咳払いが聞こえた。
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