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どっちがお好み?

「イチャコラすんのは帰ってからにしてくれ、 それとなー?お前らすげー見られてんのいい加減気付け」 西園寺が携帯で写真を撮りながら和希達に言う。 回りを見てみるとあちこちの店からたくさんの客が顔を出し2人を見ていた。 途端に真っ赤になり慌てて壮史から離れる和希に壮史は軽く舌打ちしながら西園寺を睨む。 「おっさん、覚えてろよ」 「ハニーをこんなかわいくしてやったんだから感謝してほしいけどな」 西園寺にそう言われ改めて和希を見てから壮史はため息をついた。 「………今回だけだからな」 さっきまでの気持ち悪さは一瞬で消えた。 道案内やスタンプラリーの説明も和希は笑顔でこなしていった。 壮史が側にいる、 それだけで和希は嬉しくて楽しくてたまらなかった。 その気持ちを隠したくないとも思った。 酔っ払いが近くにくるだけで自分の後ろに和希を隠すようにする壮史に和希は赤くなりながらも笑顔を零す。 今は、今だけは壮史と並んでいても普通の恋人同士にしか見えない。 ハイヒールが痛い振りをして壮史の腕に掴まり甘えてみても、歩いてくる男たちの厭らしい視線を感じても、和希には溢れるほどの嬉しさしかなかった。

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