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どっちがお好み?
急ぐ時にほど上手くいかない。
鍵穴に鍵を入れる、
それだけのことに手間取る。
漸く鍵を開け玄関に入ると壮史は和希を抱き寄せすぐに唇を重ねた。
角度を変えながら何度も唇を重ね、お互いの唇が赤く染まると壮史の熱い舌がぬるっと入ってきた。
それだけで和希の身体がふるっと小さく震えた。
水音を立てながら舌を絡めると甘い声が和希の鼻から抜ける。
ハイヒールを脱がせると壮史は和希を横抱きで抱き上げ暗いリビングを通り過ぎ寝室に向かった。
壮史は和希をベッドに降ろすとサイドテーブルの上のリモコンでエアコンをつけ、燕尾ジャケットを脱いだ。
ノットに指を入れネクタイをほどく仕草にドクンと心臓に重たい一撃を食らった気がして和希は胸の当たりをぎゅっと握った。
交代の時間がくると一旦彬の店にぞろぞろと戻った。
彬は和希たちが来ていた服を手提げの紙袋に入れ持たせてくれる。
「レンタルだから汚さないように返してね、
和希ちゃん、下着と網タイツは処分してくれていいわよ、真魚ちゃんからのプレゼントだから」
彬はそう言って笑った。
武市との挨拶もそこそこに、手配されていたタクシーに壮史と2人乗せられ、意識しすぎて会話もなかったが、部屋に付く前のほんの僅かな時間2人はそっと手を繋いだ。
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