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切ない春休み
いつもの冗談かと思えばそうではなく、試しにと言われ大学が終わった後手伝いに数日通うと和希は西園寺の店で働きたくなっていた。
父親や相澤家全員、それに難関だった壮史の説得にも西園寺は顔を出し、一ヶ月近くの説得期間を経て和希は西園寺の店のアルバイトとして雇用してもらった。
接客業なら経験してるし、と高をくくっていた和希だったが、接客業にも色々とあるものだと早々に思い知る。
西園寺の店には洋服はもちろん、帽子やバックなどの小物、腕時計、アクセサリーなど幅広く取り扱っており、
商品の名前や場所や在庫を覚えるだけでもそれはそれは大変だった。
店が狭いために基本的に在庫を持たない西園寺の店で、西園寺は数で把握しているのではなく、品物の柄や素材で覚えていて、それがあっていることに和希は愕然とする。
「買い付け俺がやってんだもん、当たり前だろ」
西園寺はしれっとそう言うが、Tシャツだけでも何百枚とあるのにそんなことが可能なのか…
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