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切ない春休み
森田葵とは同じ中学校で、卒業を目前にした2月に森田から告白され付き合うことになった。
高校が別になることはわかっていた2人は毎日一緒に帰るようになり、毎日のように和希の部屋で短い時間を過ごした。
手を繋いだのもキスをしたのも、
女性の身体に触れたのも、全て森田が初めてだった。
仕事の説明を受けながら和希は森田を盗み見る。
あの頃のような少女らしさではなく大人の女性になった森田は和希の知っている森田とは別人に思えた。
和希の視線に気付き森田が顔を上げ和希を見て微笑む。
「戸川くん、かっこよくなったね」
「…ありがとう」
「恋人、いるんだ?」
森田の視線が和希の指輪に向けられ、和希はその視線を追うように指輪を見ながらうんと頷いた。
「付き合ってから長いの?」
「高校入ってから、だから、長いかな…」
そっかと呟いた森田は俯き、その俯いた顔が歪んで見え、それを見た和希の顔も歪む。
子供だった自分は…今も大人とは言えないが、
森田に傷を残す別れ方をした、と和希は唇を噛んだ。
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