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切ない春休み
「森田、着いたぞ」
タクシーから降ろし森田のマンションに入る。
エレベーターの前で部屋を尋ねると小さい声で五階と聞こえたので、エレベーターに乗り込み階数ボタンを押した。
移っていく光を見上げていると森田が身体を預けてくるのと同時に胸に柔らかい感触を感じる。
「森田…」
和希が軽く肩を押しても森田との距離は少しも開かなかった。
エレベーターから降り森田が進む方に支えながら進み、三つドアを通り過ぎたドアの前で森田が止まる。
バックの中から鍵を取り出し鍵を開ける森田を和希は変わらずに支えた。
玄関に入り、靴を脱いだ森田が座り込むと、和希はごめんと一言詫びてから靴を脱いで部屋に上がった。
玄関横にあるキッチンで水をコップに入れ玄関で座り込む森田に渡し水を飲ませると、飲みきった森田が息を吐いたのを見て和希も息を吐いた。
森田からコップを受け取りキッチンに置き玄関に戻ると森田の側にしゃがむ。
「ベッド行ける?風呂はやめとけよ」
和希の優しい声に森田の手が和希のパーカーをまた掴んだ。
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