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切ない春休み

「戸川くん…」 「ん?」 「………………抱いて」 森田の腕が和希の首に伸びたと思ったら柔らかい身体が密着する。 甘い匂いと頼りなく感じるほど柔らかい感触に和希は一瞬目眩のように頭が揺れた気がした。 「私、戸川くんとのことが終わってからも…ダメで」 すぐ近くで聞こえる森田の声が震えている。 「誰とも……………できないの」 ぐずっと森田が鼻を啜る。 「私の身体、そんなにダメだった?」 涙声の森田に和希の胸が痛いほどに締め付けられる。 やっぱり森田を深く傷つけてしまっていた。 自分の面子のために好きだと言ってくれ身体を預けてくれた子を、こんなに長い間苦しめてしまった。 和希は森田の肩に手を置き、乱暴にならないように引き離すと、ゆっくりと口を開く。 「ごめん、あんな終わり方にして」 長い睫毛に涙が光る森田を見下ろしながら和希は一呼吸置いてから決心してまた口を開いた。

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