356 / 412
切ない春休み
真っ暗な部屋に帰ってきてから思い出す。
壮史も飲み会だった…
しんと静まり返る、自分の呼吸だけが聞こえる部屋で和希は自分からふと香る甘い匂いに笑ってから顔を歪める。
部屋を出る和希に森田は笑った。
森田の中で漸く和希を終わることができたように思えた。
釣られるように笑った和希に森田が倒れるように身体を寄せてきたのを思わず受け止めると森田の唇が和希の唇に一瞬だけ重ねられた。
「…………浮気、だ」
「葵が言うなよ」
ふふっと笑う森田の額をこつんと小突いてやると和希を見上げて挑戦的な目で見つめる。
「帰ったらシャワーしたほうがいいよ、いつもより多めに香水つけてるから匂い移ってると思う」
「女って、怖いな」
「そうだよ、知らなかった?」
そう言って笑う森田は今までで一番大人びて見えた。
ともだちにシェアしよう!