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甘い恋人
渡邉をけしかけた手前、自分だけやりもせずにやりましたという顔は出来ない。
それに……壮史に好きだと言いたい気持ちは和希にも溢れるほどにあるのだ。
ただ、可愛くも柔らかくもない同じ男の自分が好きだと伝える絵面が耐えられない。
行為中なら………言える。
お互い普段とは違うし、壮史からの熱くて甘い愛撫を受けながらなら言える。
妙な使命感に燃えた和希は高いテンションのままで風呂掃除や夕飯の支度をテキパキとこなしていった。
「ただいまー」
その声で酔っているのがわかった。
玄関まで出迎えた和希を見ると壮史の顔がふにゃりと笑顔で歪む。
スニーカーを片手で脱ぎながら空いた手で和希を抱き寄せ顔のあちこちに酒臭いキスを落としてくるのを胸を押して和希が止める。
「酒臭い。風呂入れよ」
「和希が洗って」
いつもなら絶対にしない、首を傾げて甘えるように言う壮史に和希は赤くなった顔を背けながらも頷いた。
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